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「見たことのない、新しい作品」を"色"で表現する──インディーゲームを開発するOtorakobo Inc.のご紹介

11/2/2024 コラム

「見たことのない、新しい作品」を追求するインディーゲーム開発会社・Otorakobo。セガでの開発経験を持つ代表の奥田が、独立までの軌跡や「色」をテーマにした独自の表現手法、Otorakoboの展望について語りました。

Otorakoboの代表・奥田が語る、“色”への想いと未来

ゲーム業界で注目を集める、インディーゲーム。その中でも独自の世界観で新しい挑戦を続けるOtorakobo Inc.の代表、奥田がインタビューを受けました。「色」をテーマにした作品づくり、そしてインディーゲームの開発に懸ける思いをお伝えします。

インタビュアー情報:岩渕ゆり。埼玉県出身・アキバ仕込み・岩手県在住のライター。ゲームや漫画、アニメ、ニコニコ動画好きが高じて長らくアキバ勤めをしていた、古き良きオタク。


「できない」から「それなら自分でやろう」へ|セガ時代から続く挑戦の軌跡

——Otorakoboを設立したきっかけを教えていただけますか?

奥田:元々、株式会社セガにゲームクリエイターとして在籍していました。当時はゲームクリエイターながらコードを書く機会がどうしても限られており、それが思いの外ストレスになっていました。

本来セガでは、副業は許可されていなかったのですが、当時はゲームクリエイターとしての心の葛藤が抑えきれず。業務外の時間を活用して個人での開発活動を始めたのが、Otorakoboの発端です。

——独立を決意されたのはいつ頃だったのでしょうか?

奥田:2015年くらいから個人での活動を始めて、2018年に1作目『白の少女』、2020年9月に2作目『虹のユグドラシル』をリリースしました。『虹のユグドラシル』がモバイルの有料ダウンロードランキングで2位を記録したことで、インディーゲームへの手応えを感じました。法人化の決意を固め、虹のユグドラシルをリリースした同年となる2020年11月に、会社設立という流れです。

Rainbow Ygg 2nd

ただ、法人化したタイミングでは、まだセガに所属していました。セガの仕事をやりつつ、並行して3作目の制作を進めようと思っていたのですが、2022年4月には『虹のユグドラシル』のNintendo Switch版をリリースして、これにも手応えを感じたこと、さらに「インディーゲーム制作1本にフルコミットしたほうが良い作品が作れる」との思いが強くなったことから、完全な独立を決めました。

——インディーゲーム市場はどんどん拡大していますが、独立する際も追い風が吹いていると感じていたのでしょうか?

奥田:独立当初は追い風が吹いているような感覚はなく、純粋に「全力でコードをかける。ユーザーに届けたい作品を届けられる。」の一心で活動をしていました。

そんな中で「時代背景的にも追い風が吹いているよね」と声をかけられることがあり、インディーゲームそのものがより一層の注目を集めている環境があることを感じたんです。

ですので、はじめから追い風を感じて独立を決めたわけではありませんでした。「あれ、もしかしたら時代に乗ってるんじゃ……?」という部分は、独立後に感じたところです(笑)

感情を色で紡ぐ|独自の表現手法が生まれた理由

——Otorakoboでは、どのような作品を作り、届けたいと思っているのですか。

奥田:「見たこともない、新しい作品を届けたい」という信念を持ち、インディーゲームを制作しています。

というのも、私はセガがリリースした「電脳戦機バーチャロン」というタイトルが非常に好きで、セガに入社する際はバーチャロンを目でコピーし自作することを面接での切り口にして、入社を果たしました。

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入社後に、当時の先輩から「次は新しいものを作ることにチャレンジだね。」とアドバイスをいただいたんです。その言葉が当時の私のゲームクリエイターとしての制作魂を突き動かし、今でも変わらない大きな信念となっています。

——Otorakoboの作品は、すべてのタイトルで「色」がテーマとなっていますよね。理由をお聞かせください。

奥田:「見たこともない、新しい作品」というのは、「ユーザーが理解しづらく、伝わりにくい作品」とイコールになってしまうと思っています。そのことから、未知の体験というコンセプトは据えながらも、ユーザーに伝わりやすい形にしたいと考えたんです。

伝わる表現の架け橋として「色」という普遍的な表現方法を選びました。新しい体験を提供したいという思いと、それを直感的に理解していただきたいという願いから生まれたテーマが「色」です。

——なぜ「色」を選んだのでしょうか?

奥田:私は、それぞれの人間にある背景や、人の感情の変化などに心を動かされます。だからゲーム内でも、人間らしい部分を表現したいと考えています。

「キャラクターを自分の好きな感情や性格に染め上げたい」。そのための表現として、色という見た目と感情がリンクしたら、分かりやすくて楽しそうじゃないかなと思ったんです。

例えば、活発な性格は赤色、冷静な感情は緑色、敬愛の気持ちは青色に。色彩と感情の結びつきを通じて、それぞれのキャラクターの内面的な変化を、視覚的に楽しんでいただきたいという思いから「色」で表現をすることを決めました。

三者三様の個性|Otorakoboのユニークなチーム構成

——現在のチーム構成について教えていただけますか?

奥田:外部企業やクリエイターと協業もしていますが、Otorakoboの内部スタッフ自体は奥田・屋田・伊波の3名です。

私がエンジニアとやりたいことの発起人で、屋田がそのアイデアをまとめるゲームプランナーとサウンドを担当。あとは面白いんですけど、伊波はプランナーサイドであり”プロの消費者”です(笑)

——プロの消費者!何をご担当されるのでしょうか?

奥田:ゲームをプレイして、その感情、操作感などをすべてリストアップできるんです。「ユーザー視点からの品質管理を専門とするポジション」というと、わかりやすいかもしれません。体験したことをしっかりと言語化してフィードバックしてくれる、頼りになる存在です。

開発者視点だけでなく、プレイヤーの感覚に寄り添った作品づくりを実現するための重要な存在となっています。

——お三方の出会いは、どこだったのでしょうか?

奥田:私はセガ時代に、オンライン協力対戦ゲーム『Wonderland Wars』を制作していました。Wonderland Warsリリース直後は終業後にゲームセンターに通っていたのですが、そこで出会いました。

閉店までゲームセンターで遊んで、そのまま近くの飲み屋さんで深夜まで飲む。その飲み屋さんではゲームについてよく語り合っていて、いろいろなアイデアも出し合っていたんです。

私がインディーとしてゲームを制作することに決めた際、今までのアイデアを具現化したく、二人に「一緒にゲーム制作しよう」と、声をかけました。

酔いどれたちが描く夢|「Otorakobo」に込められた想い

——社名となっている「Otorakobo」の由来を教えていただけますか?

奥田:「大虎(オオトラ)」って、酔っぱらっている人のことを指す言葉なんです。私たちは、3人でお酒を飲みながら、アイデアを膨らませたりゲームをプレイしたりするのですが、そういう人たちが集まってゲームを作るという意味を込め「Otorakobo(大虎工房)」と名付けました。

Dranker

形式的な枠組みにとらわれず、自由な発想で作品づくりに取り組みたいという思いも込められています。

それだけでなく、プレイするユーザーさんにとっても、大虎は意味のある言葉になっています。

「もっとファジーに、ゆるく遊べるものを作りたい。緊張や集中を強いるゲームではなく、誰もが気軽に楽しめる作品を。お酒を飲んでも楽しめるように」。そのような思いも込めています。

経験を糧に、新たな領域へ|3作目『IrisyAqua』への挑戦

——3作目となる『IrisyAqua』は、どのような作品なのでしょうか。

奥田:セガ時代に『Wonderland Wars』を制作していたことから、オンラインゲームや対戦ゲーム、バトロワに関する多くの知見を得て、経験を積んできました。

Wonderland Warsの経験を糧に、Otorakoboの3作目となる『IrisyAqua』ではバトロワ × MOBAをキーワードとして、ユーザーの皆さまが見たこともない、新しいゲームを作り出したいと考えています。

irisy aqua

——「見たこともない、新しい作品」を届けた先に、ユーザーにどのような気持ちを感じていただきたいか、教えてください。

奥田:「世の中は思ったより自由だ」ということを、感じていただきたいです。大人になっていく過程でNGなことはよく教わりますが、実際にはチャレンジや行動のほうが重要だったと、独立してから実感しています。

既存のシステムの焼き直しよりも「良くわからない“何か”のほうが、お祭りとして楽しくないですか?」というのを、感じていただきたい。私自身、型にはまったものの再現ではなく、予想外の展開や体験にこそ真の楽しさがあると信じています。これまでの枠組みにとらわれず新しい体験に挑戦する勇気の大切さを、作品を通じて伝えていきたいです。

デジタルとリアルの融合を目指す|Otorakoboが描く未来

——今後の展望を教えていただけますか?

奥田:まずは具体的な目標として、3作目『IrisyAqua』で、Nintendo Switchにおけるインディーゲームのダウンロードランキング1位を目指しています。その先には、協業しているアニメーション制作会社のstudio.とのコラボレーションによるアニメ化など、メディアミックス展開という夢もあります。

コラボレーションカフェの展開など、ファンの皆様と直接触れ合える機会も創出していきたいと考えています。現在開発中の『IrisyAqua』が、アーケードゲームとしての稼働も期待できるゲーム性・内容となっていることなども含めて、デジタルとリアルの両面で、作品の世界をより豊かに体験していただける場を提供することが目標です。

——本日は貴重なお話をありがとうございました。

インディーゲーム開発という領域で、独自の表現を追求し続けるOtorakobo。「色」で表現される感情の機微で「見たことのない、新しい作品」を創造していきます。